やんばるの森を「真の世界遺産」に:防衛省・環境省との「意見交換」の報告

9月21日、辺野古・高江を守ろう!NGOネットワーク等の市民団体は、福島瑞穂参議院議員事務所の協力を得て、ユネスコ世界遺産となったやんばるの森(遺産登録名称は「沖縄島北部」)について環境省と防衛省と「意見交換」を行った。(国際環境NGO FoE Japanのサイトを参照) 蝶類研究家で返還地の米軍廃棄物の問題に取り組んできた宮城秋乃さんや、私(吉川秀樹)もOkinawa Environmental Justice Projectの代表として沖縄からオンラインで参加した。まずこの「意見交換」の場を可能にした辺野古・高江NGOネットワークと福島議員事務所に感謝を申し上げたい。また対応してもらった環境省と防衛省の職員にも感謝したい。

オンライン集会と「意見交換」の視聴はこちらをクリック


今回の「意見交換」はやんばるの森が世界遺産に登録されて初めての政府とのやり取りであった。いろいろなことが確認できたと思う。

もちろん防衛省や環境省の回答はこれまでと変わらないところも多く、納得できるものではなかった。しかしユネスコ世界遺産登録はやはり重く、きちんとした対応をしないといけないという態度が少なくとも環境省の方からは感じられた。

沖縄における米軍基地の集中や訓練を「日米地位協定」をもって正当化してきた防衛省と、世界遺産条約という国際条約を守らなければならない環境省。その二つの省の立場とrapture (不和)が垣間見られた「意見交換」でもあった。

やんばるの森の世界自然遺産登録は、地位協定と世界遺産条約を必然的に向かい合わせながら、端的かつ根本的な問いを日米政府に突きつけている。「なぜわざわざ世界遺産のあるところで軍事訓練をしなければならないのか」。その問いをさまざまなチャンネルや枠組みを通して追求することが、やんばるの森を軍事訓練のない「真の世界遺産」にしていく鍵となる。

今回の「意見交換」はその「真の世界遺産」にしていく取り組みの第一歩であり、NGOとして世界遺産登録後のやんばるの森の保全の状況と北部訓練場の影響をIUCNに報告するための情報収集の第一歩でもあった。

ということでOkinawa Environmental Justice Projectとしての「意見交換」の内容報告は以下の通り。(防衛省と環境省に提出していた事前質問はこちらのリンクから)なお、宮城秋乃さんと辺野古・高江NGOのメンバーである国際環境NGO FoE Japanもそれぞれのブログで報告しているので読んでみることをお勧め。

1. 米軍の訓練の影響について、特に米軍機の騒音による生物への影響について。

質問に対する回答
  • 2012年のオスプレイ配備の際に米軍が行った「環境レビュー」の中で音の影響の評価は行っている。影響は著しいものではないという評価であった。現在は、高江やその周辺集落で騒音のモニタリングを行っているが、環境省の基準値より低い値となっている。(防衛省) 
  • 世界遺産地や隣接する北部訓練場においては米軍機の騒音について調査を行っていない。(防衛省、環境省)
  • 登録の過程ではIUCNから騒音の問題の調査は求められなかった。(環境省)

NGOからのコメント 
  • 米軍の「環境レビュー」はシュミレーションによる予測・評価であり実測ではない。また調査が行われたのはやんばるの森が世界遺産に登録される随分前のこと。高江区やその周辺集落ににおける騒音調査は世界遺産地や北部訓練場での調査ではない。
  • 世界遺産地を守るための騒音を含む影響調査が必要。環境省の2019年世界遺産推薦書において米軍関係の問題に対応する仕組みとして明記した「日米合同委員会」において騒音の調査について議論するべき。

環境省からのさらなる回答 
  • 騒音問題について「日米合同委員会」において騒音の影響の調査について議論してもらう。ただし同委員会での具体的なやり取りの公表については難しい。

2. 世界遺産地と北部訓練場の境界線の問題について。特に間違って境界線を超えた場合、軍事訓練が行われていることによる人や生物に対する危険性、安全性の問題について。

質問に対する回答
  • 世界遺産地と北部訓練場の境界線を米軍が超えるかどうかの監視は行っていない。北部訓練場周辺の米軍機の騒音の把握には努めている。米軍が北部訓練場の外に出て訓練をしてしまった場合は通報などを通じて対応している。昨年12月に米軍がテントを訓練場の外に張っていたが、通報を受けて防衛局が撤去をさせた。(防衛省)
  • 世界遺産地と北部訓練場の境界線は明示されておらず、明示することは困難。環境省としては、境界線の問題については、他の国立公園と同じように既存の法令で管理するという方針。境界越えに対するその他の措置はない。(環境省)

NGOからのコメント
  • 境界線越えの監視を行っていないのは問題。国立公園に関する既存の法令は、国立公園のすぐ隣で軍事訓練が行われていることを想定したものではない。危険性や安全性の問題を前提にした境界線越えの対応措置が必要。
 
*上記のNGOのコメントに対する回答はなし。

3. 北部訓練場返還地における米軍廃棄物の問題、特に廃棄物の現状の認識と対応の状況、また警察により宮城秋乃さんが家宅捜査を受けたことについての見解は?
質問に対する回答
  • 防衛省としては、跡地利用特措法(沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法)に基づき、返還前に支障除去を行ったという認識である。(防衛省)
  • 廃棄物が確認された場合は、その都度、協議の上処理を行う方針となっている。(防衛省)
  • 警察による宮城さんの対応についてはコメントを控える。(防衛省、環境省)

NGOからのコメント 
  • 事実として米軍の廃棄物は多く残っており、土壌汚染も確認されているのだから、返還前に支障除去を完了したと主張するのは問題。この主張はやめるべき。
  • 廃棄物や土壌の汚染は確認された時に対応するのではなく、計画的に除去、除染していくことが必要。
  • 米軍の廃棄物を見つけた場合はどこに連絡すれば対応してくれるのか明確にせよ。

防衛省からのさらなる回答 


以上

文責 吉川秀樹



 

このブログの人気の投稿

World Heritage Watch Report 2024が発行 世界自然遺産やんばるの森と米軍北部訓練場

OEJP声明:日本政府による辺野古新基地建設設計変更「代執行」承認について