World Heritage Watch Report 2024が発行 世界自然遺産やんばるの森と米軍北部訓練場
2024年6月17日
プレス・リリース
World Heritage Watch Report 2024が発行
世界自然遺産やんばるの森と米軍北部訓練場
2024年6月2日、ベルリンを拠点にユネスコ世界遺産の保護・保全に取り組むNGO、World Heritage Watchは、World Heritage Watch Report 2024(WHW Report 2024)を発行しました。私たちの報告 “Northern Okinawa: A Review of Japanese and U.S. Measures of Conservation is Urgent(沖縄北部: 早急な日米の保全措置の見直しを)"(p.207-p.211)も、他の54の報告とともに掲載されています。執筆者は、The Informed Public Project代表の河村雅美さん、蝶類研究者の宮城秋乃さん、辺野古・高江を守ろう!NGOネットワークの花輪伸一さん、そしてOkinawa Environmental Justice Project代表の吉川秀樹の4人です※。WHW Report 2024は、ユネスコ世界遺産センターおよびユネスコ世界遺産条約の諮問機関であるIUCN(国際自然保護連合)、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)、ICCROM(文化財の保存及び修復の研究のための国際センター)に送付されています。
私たちの報告では、まず、世界遺産やんばるの森に残る危険な米軍廃棄物の問題や、沖縄防衛局による廃棄物撤去や環境回復の取り組みについて、日本の環境省がユネスコ世界遺産センターとIUCNに対して報告していないことを取り上げました。次に、日米両政府が、軍事訓練が世界遺産に与える影響について調査を行ってきていないこと、そして、日本の自衛隊を含む他国の軍隊が北部訓練場での訓練に参加することで、軍事訓練がより複雑で問題化していることを強調しました。さらに、2023年7月に発表された新しい「協力声明」を含め、日米両政府がこれまで発出してきた「協力」文書や設置した「協力」のメカニズムは、日米地位協定の枠組みの中にあるため、これらの文書やメカニズムの実施においては米軍の裁量権が働き、廃棄物や訓練の問題を解決できていないと指摘しました。そして最後に、世界遺産やんばるの森の「顕著な普遍的価値」を確保するために、ユネスコ世界遺産条約に基づく協定を結ぶよう日米両政府に求めるなど、上記の問題を解決するための3つの提言を行なっています。
WHW Report 2024の「序文」でも触れられているように、現在、世界の多くの遺産や世界遺産が戦争や軍事化による破壊に直面しており、ユネスコの世界遺産制度が保護・保全のために機能するかどうかが試されている状況です。国連環境計画(UNEP)をはじめとする国際機関は、危機感をもって、戦争と軍事化が人命、文化財、環境に与える影響について取り上げています。戦争と軍事化を止めるための世界的な取り組みはこれまで以上に必要とされており、世界遺産やんばるの森を軍事訓練や軍事廃棄物から守ることは、この世界的な取り組みへの私たちからの貢献でもあります。
私たち著者は、WHW Report 2024の発刊を踏まえて、これからも市民社会のメンバー、世界遺産センター、IUCN、そして日米両政府と協力し、やんばるの森を軍事訓練や廃棄物のない「真の世界自然遺産」にしていくための取り組みを続けていく決意です。
連絡先
Okinawa Environmental Justice Project
代表 吉川秀樹
*編集上の誤りにより、本報告の最初のページには4人の著者のうち2人の名前しか掲載されていません。