World Heritage Watch Report 2023のリリース~世界遺産やんばるの森と米軍北部訓練場:国際社会での更なる検証へ~

2023年06月05日


World Heritage Watch Report 2023のリリース

世界遺産やんばるの森と米軍北部訓練場:国際社会での更なる検証へ 

 

 202363日、ユネスコ世界遺産の保全保護に取り組むベルリン拠点のNGO, World Heritage WatchWorld Heritage Watch Report 2023(以下、WHW Report 2023)をリリースした。2021年に世界自然遺産に登録された「沖縄島北部(やんばるの森)」についての私たちの報告 “Still a Long Way to Go in Northern Okinawa Island and the US Military’s Northern Training Area” [真の世界遺産へ道なかば:沖縄島北部と米軍北部訓練場](p.206-208)も含まれている。




 内容は、やんばるの森が直面する北部訓練場やその訓練、遺産地内で発見され続ける米軍廃棄物の問題の報告と、それらの問題の解決のための要請・提案が含まれる。著者は、Okinawa Environmental Justice Project代表の吉川秀樹、The Informed Public Project代表の河村雅美、チョウ類研究者の宮城秋乃、そして、辺野古・高江を守ろう!NGOネットワークの花輪伸一。今回の報告はWHW Report 2022での報告に続き二度目となる。

 World Heritage Watch2017年から毎年リリースしているWHW Reportは、1100以上ある世界遺産の中でも、問題を抱える世界遺産について、市民社会のメンバーがその現状を伝え、問題解決のための要請・提案を国際的に示す重要な報告書である。WHW Reportは、ユネスコ世界遺産センター、IUCNなどの関連国際機関と共有され、市民社会による関係政府へのロビーイングの材料として重要な役割を果たしてきた。WHW Report 2023では、やんばるの森や今年2月のトルコとシリアでの大地震により大被害を受けたシリア、アレッポの世界遺産を含む45の世界遺産について報告がなされている。

 

 私たち市民社会は、やんばるの森の世界自然遺産登録の過程を通し、また遺産登録後も、一貫して、日本政府が隠そうとし、沖縄県や関連自治体がきちんと声を上げてこなかった北部訓練場の問題と米軍廃棄物の問題をユネスコ世界遺産センターとIUCNに訴えてきた。そして問題の解決に向けて要請・提案を行ってきた。私たちの取り組みは、環境省の2019年の世界遺産登録推薦書における北部訓練場の存在の明記や、世界自然遺産に関わる問題解決に取り組むための日米間の「合意文書」の作成、「日米合同委員会環境分科会」の問題解決のための機関としての位置付けへと繋がっていった。また沖縄防衛局による世界遺産内の米軍廃棄物の撤去作業に結びつき、沖縄県や地元自治体も米軍の訓練や廃棄物の問題に声を上げ始めている。World Heritage Watchとの連携、そしてWHW Reportでの報告は、私たちとユネスコ世界遺産センターやIUCNとの関係をより直接的、かつ透明性を持つものにしてきており、その効果は大きいと考える。


 これからも私たちは、World Heritage Watchや関連NGOと協力しながら、WHW Report 2023を活用し、やんばるの森を、軍事演習/訓練場のない、そして米軍廃棄物のない「真の世界自然遺産」にするために、世界遺産センター、IUCN、日米両政府に働きかけていく。この67月には、沖縄防衛局や米国領事館との要請交渉を計画している。さらには9月には、サウジアラビアのリアドで第45回ユネスコ世界遺産委員会が開催されるがその直前に行われるNGO-ユネスコ・フォーラムにおいての参加を計画している。

 

連絡:

Okinawa Environmental Justice Project

代表 吉川秀樹

yhidekiy@gmail.com

080-8554-9718



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