辺野古軟弱地盤問題の科学的分析評価について米国防総省に情報公開請求

 2023年9月13日、Okinawa Environmental Justice Project代表吉川秀樹は、沖縄平和市民連絡協議会及び沖縄環境ネットワーク世話人の真喜志好一さん、ジュゴン保護キャンペーンセンター共同代表の海勢頭豊さんと、沖縄県庁の県政記者クラブにて記者会見を行いました。記者会見の内容は、米国国防総省に対して辺野古新基地建設問題に関する米国国防総省の独自の科学的分析評価の公開を、米国情報公開法を使って請求したことについてです。

U.S. Department of Defense
Image Source: U.S. Department of Defense

 記者会見で読み上げた「発言文」を下に紹介します。今回の情報公開請求の理由、経緯、意義の説明です。主論点の一つは、「沖縄県知事は、基地を使う立場にある国防総省の独自の科学的分析評価を確認、検証することなく、日本の裁判判決により[設計変更の]承認義務が生じたとして、設計変更を承認することはできない」です。

 下に「発言文」と情報公開請求文書(和訳付き)のpdfファイルも掲載しています。なお発言文のpdfには、注釈があり、そこで文献資料の例を紹介しています。また日米政府の文書も添付文書として記載しています。多くの人にこの情報と見解を共有してもらえればと思います。


辺野古新基地建設の軟弱地盤問題についての米国防総省の評価の情報公開請求について
(記者会見用発言)吉川秀樹 作成

情報公開請求について
 2023年9月11日, Okinawa Environmental Justice Project(OEJP)は、市民社会のメンバーを代表して、米国国防総省に対して、米国情報公開法(Freedom of Information Act)を使い、辺野古新基地建設における軟弱地盤の問題についての同総省の独自の分析評価の公開を請求しました。情報公開法を使い情報を引き出してきた専門家や米国の環境団体との話し合いを踏まえ、1) 軟弱地盤やその改良工事の実現性、2) 改良工事による環境への影響、そして3)基地の運用の可能性、という3点についての国防総省の分析評価の情報の公開を請求しています。請求先は、国防総省の組織を考慮し、1) Department of the Navy-including Marine Corps, 2) Headquarters U.S. Marine Corps, 3) U.S. Indo-Pacific Commandの3箇所に送っています。なお、3箇所からすでに情報公開請求受理の報告を受けています。

 今回の国防総省への情報公開請求は、9月4日に最高裁判所が玉城デニー沖縄県知事の設計変更不承認を違法とする判断を行い、辺野古新基地建設問題は新たな局面を迎えるなか、辺野古新基地建設を止めるための市民社会の重要な取り組みの一つです。

情報公開請求の理由、経緯、意義について
 軟弱地盤改良工事や基地建設が、環境への影響なく可能である、と主張しているのは日本政府だけです。そしてその主張を認めたのが日本の裁判所です。米国のシンクタンクには、基地建設の実現性そのものを疑問視するものもあり 、米国連邦議会調査局会計検査院も、地盤改良に関して技術的問題、環境問題を抱えていると指摘しています 。一方、基地を使用する立場にある国防総省からは、軟弱地盤やその改良工事の実現性、改良工事による環境への影響、そして実際基地が運用可能なのかについての独自の科学的分析評価が公表されていません。科学的評価を行ったのかも不明です 。

 私たち市民社会のメンバーは、軟弱地盤の問題が表面化して以来、日米政府のこの問題に対する認識について省庁交渉のなかで追求してきました。日本政府(防衛省)は、「辺野古が唯一の解決策であるという方針について、累次にわたり確認し」基地建設を進めていると政治判断を強調してきました。しかし、私たちの「軟弱地盤改良や基地建設が環境に影響を与えることなく実現可能性だと米側も了解しているのか」という科学的視点からの追求に対しては、「日本政府は説明している」としか答えていません 。米側も実現可能だと判断しているとは日本政府は答えていません。これらの状況を踏まえて、私たちは国防総省に対し、辺野古新基地建設における軟弱地盤の問題についての同総省の独自の分析評価の公開を請求しました。

 「辺野古が唯一」という政治判断や合意が、物理的に不可能なものを可能にすることはありません。辺野古新基地建設の今後の展開に県知事、県、そして市民社会が対応していく上で、国防総省の分析評価を公開させ、それを検証することが必要なのは明らかです。特に沖縄県知事は、基地を使う立場にある国防総省の独自の科学的分析評価を確認、検証することなく、裁判判決により承認義務が生じたとして、設計変更を承認することはできないはずです。この論点を、知事や県民、国内外の市民社会のメンバーに共有してもらうことが、今回の私たちの情報公開請求の意義の一つになります。

 現在私たち市民社会のメンバーが懸念しているのは、国防総省の科学的分析評価を検証することなく、沖縄県知事が設計変更の承認判断を下すこと、させられることがもたらす問題です。これは米国での「ジュゴン訴訟」(2003〜2020年)を振り返るとよく分かります。2008年に米国連邦地裁は、国防総省に対して、基地建設によるジュゴンへの影響についての調査を命じました。国防総省の専門家が沖縄防衛局の環境アセス準備書を分析評価した結果、アセスの様々な不備を指摘する報告書(Welch 2010)が作成されました 。その報告書を、当時の仲井眞弘多沖縄県知事が入手し理解していれば、「埋め立て承認」をすることはできなかったはずです。しかし残念なことに、国防総省はその報告書の開示をなかなかせず、裁判を通して報告書が開示されたのは、仲井眞知事が承認をした5年後の2018年です。

 その結果、問題がある環境アセス(国防総省も問題を指摘した環境アセス)を、沖縄県民が選出した沖縄県知事が、問題なしと判断し、埋め立てを承認した、という論理と構図が成り立つことになり、現在に至っています。この論理と構図は、日米政府にとって、辺野古新基地建設と環境破壊の強行と、その責任を沖縄側に押し付けことを可能にしています。私たちはこの論理と構図を理解し、辺野古新基地問題に対応していくことが必要です。特に沖縄県知事は、最高裁判決を受けて設計変更についての判断をする前に、まず基地を使う立場である国防総省の軟弱地盤問題に対する科学的分析評価を求めていくことが不可欠です。現時点における知事による設計変更の承認は、地盤改良はできない、基地は完成しない、環境破壊は続く、普天間飛行場は固定化する、その最悪のシナリオの責任をすべて沖縄県知事と沖縄県民が背負う状況を作りかねません。そのような状況を作らせないことが、今回の情報公開請求の意義の一つになります。

市民社会の今後の取り組み
 今後、私たち市民社会のメンバーは、軟弱地盤問題に対する国防総省独自の科学的分析評価が公開されていないこと、情報公開を国防総省に請求したことを、国内外の市民社会と影響力をもつ機関や人々に広く伝えていきます。まず、情報公開請求を行ったことについて、米国連邦議会会計検査院、連邦議会調査局に報告します。次に、米国の市民や市民団体に協力してもらい、連邦議員にこの問題を伝え、情報の公開を議員からも求めてもらえるように取り組んで行きます。

 もし国防総省の分析評価が公開されたのなら、それを多くの専門家に検証してもらう取り組みを行います。国防総省の分析評価は英語なので、国際的検証が可能になるはずです。もし国防総省が独自の科学的分析評価を行なっていないのなら、評価分析を求める取り組みを展開していきます。これらの取り組みを展開していくなかで、「辺野古が唯一」という政治的判断や合意の問題点や非実現性が明らかになり、新たな実現性がある早急な普天間飛行場閉鎖/移設計画の作成と実施につながると確信しています。

以上.


 
 *「発言文」の注1で Cancian, F.M. (2020)となっていますが、正確には、Cancian, F.M. (2021)です。どうもすみません。                                
 

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