米国防権限法、普天間・辺野古、沖縄県知事選挙

2027会計年度米国防権限法(案)と普天間・辺野古
連邦議会下院軍事委員会が7月に提出した2027年度国防権限法(案)に、普天間代替施設(辺野古新基地)建設の状況や完成予定年の説明を含めた報告書を機密文書として提出することを国防総省に求める条項が入っていることを知っている人は何人いるだろうか。この事実は非常に重要で、9月13日の沖縄県知事選挙とも大きく関連すると私は考えている。

  
建設の状況と完成予定時期を求めた条項

   


2019年以降、米国防権限法のなかで辺野古新基地建設や普天間移設の状況説明を求める条項はなかった。日本政府が言い続けてきた「辺野古が唯一」の政策が日米の大前提としてあったからだ。

しかし、軟弱地盤問題により、工事は遅れに遅れている。日米政府の2013年統合計画では、2022年までに辺野古が完成し、普天間も返還されるはず予定だった。浅瀬の辺野古側の埋立はほぼ終わっているが、軟弱地盤のある大浦湾側は、埋立工事の前提となる地盤改良工事も10数%しか進んでいない。台風による工事の中断も度々あり、台風の影響で建設した護岸の一部が壊れたこともある。(日本政府は台風の影響を表に出してこないが、米軍は台風の影響に言及してきた)。 

台風により工事船が撤退した大浦湾 (今年6月)
国防総省にとって、辺野古新基地建設は実現性はもちろん、戦略的視点からも非常に重要な問題となっている。だからこそ、2027年度国防権限法案に、辺野古や普天間移設の状況説明を求める条項が記載されたと考えるのがロジカルだろう。

国防総省が独自にその科学的専門性を使って、軟弱地盤問題を検証すれば、この普天間・辺野古移設の実現性や妥当性が問われるのは間違いないだろう。米側から現在の普天間移設/辺野古新基地建設は問題だという声が上がれば、普天間の閉鎖、移転に向けて新たな取り組みが起こるだろうし、辺野古も止まる可能性も生まれてくる。



今後、上院軍事委員会からの法案提出があり(現在議論が中断している)、上院と下院議での調整が行われ、連邦議会案が大統領に送られ、大統領の署名を持って法となる。辺野古を中止し、普天間の無条閉鎖・返還のためにも、この条項をぜひ国防権限法にそのまま採択してもらいたい。


日本政府の動きと知事選挙

しかし私が大きく懸念していることがある。日本政府にとって非常に都合の悪いこの条項を、日本政府が米側に削除するように働きかけているのではないかという懸念だ。(実際、2020年に米国カルフォルニア州バークレイ市の議会が辺野古新基地建設反対の決議を議論する際、日本領事館から議員に圧力がかかり、一度採択が見送られた。その後、建設反対決議が再提出され、採択されたという経緯がある。)


そして、この条項の削除を求める際、今回の沖縄県知事選挙で辺野古容認(「辺野古が唯一の解決策」)の候補者が当選すると、日本政府にとって非常に都合のいい状況になっていくという懸念だ。県民が選んだ知事が軟弱地盤は問題ないと言っている、辺野古が完成するまでは普天間を使える、という主張を米側にできるからだ。完成しない辺野古を横目に、普天間をいつまでも継続使用できるなら、米軍とっても都合がいいはずだ。


 それから、連邦議会が求めている完成時期の提示に関しては、もっと興味深いことが起こっている。これまで日本政府は完成時期を提示してこなかった(宜野湾市長が何幾度要請しても提示してこなかった)。工事の実現性が疑われているのに完成時期を表明できるわけはないはずだ。いい加減に完成時期を表明したら国の責任問題になる。ちなみに、米国防総省は、これまでも米連邦議会公聴会で完成時期を問われ、日本政府の代わりに「予定より遅れている」と答えざるをえない状況になっていた。

 

その完成時期について、日本政府に非常に都合のいい形で表明してくれた人が現れたのだ。それは知事選から降りた下地幹郎氏だ。日本政府や自民党との政策協定という形で、「辺野古移設工事を2036年(令和18年)に終了させ、その後に速やかに普天間飛行場を返還し、その期日を明らかにすること」という努力目標を表明している。どこからこの2036年をもってきたのか、具体的根拠も示されていないのが現状だが、時期を表明していることに変わりはない。日本政府は「沖縄の政治家が2036年に終了させる」と言っていると米側に伝えることができるのだ。


普天間の継続使用、税金の無駄使いによる辺野古の環境破壊の責任がすべて沖縄側になっていくというとんでもないシナリオだ。ただ選挙の結果では、このシナリオ通りに進む可能性は大きい。(外務省は、国連人権理事会人種差別撤廃員会に宛てた2025年8月の書簡で、辺野古新基地建設に関して「沖縄県知事から埋立承認を得て、同事業(辺野古新基地建設)に着手した」などとし、沖縄側の責任に言及する議論を展開している。)

 

OEJPは、選挙の結果にかかわらず、辺野古反対、無条件での普天間の閉鎖・返還を訴えていく。そのためにも、2027年度の米国防権限法にこの条項を残させたい。


OEJP 

代表 吉川秀樹

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